黒髪山

 

黒髪山

 正田より新見に入るの途上、御崎(みさき)の鼻を廻ると右方遙かに、高山の群峰の上に頂をあらはすあり。老樹鬱蒼(うっそう)として常緑の色ふかし。これ名にし負ふ黒髪山にして、新見の東端より、木谷川に沿ふて上ること約一里、塵界を去れる一仙境にして、山頂に近く古刹青龍寺(しょうりゅうじ)あり。古色蒼然たる堂塔、老樹の間に隠見(いんけん)す。(中略)青龍寺は僧空海の創建と傳ふ。上人豊永(とよなが)村の三尾(みおう)寺(じ)を開基せられ後、佛法弘通(ぶっぽうこうつう)の為伯耆(ほうき)に向はんとして、唐松(からまつ)より伴蔵(ばんぞう)と云ふ坂道を越えられける時、その山容の秀麗にして温雅(おんが)なる、曾て大唐に學びし時の青龍寺に似たりとて、茲(ここに)に錫(しゃく)を留め修法の霊場を開かる。之れ當寺の縁起にして大師の作と稱(とな)ふる佛像を傳ふ。春は若葉によく花によし。夏は風涼しく水清冽(せいれつ)にして避暑に適し、数日をこの山上に過さんか夏の苦暑を忘れ、俗塵を脱却して心身の暢然たるを覚ゆ。秋は紅葉の美あり、冬は白雪の大観に富む。古来歌枕として歌詠多し。 「阿哲郡誌抜粋」

 黒玉之玄髪山乎朝越而 山下露爾沾來鴨 (續古今集) 人丸(柿ノ本人麻呂)
(ぬばたまのくろかみやまをあさこえて やましたつゆにぬれにけるかも)

旅人のますげの笠やくちぬらん 黒髪山の五月雨のころ    玄賓 僧都
「阿哲郡誌抜粋」


所在地:新見市新見
種別:山(標高647m)
主な保護体制:保健保安林

「自然 歴史 学術 文化」
・山中の青龍寺の観音堂は、昭和44年新見市指定重要文化財
・新見市指定天然記念物  アテツマンサク
・「古来歌枕として歌詠多し」とあるように数々の詩が詠まれている。
・大正13年植物学者故牧野富太郎博士によってアテツマンサクが発見命名された原木がある。
・山中の原生林には栃・樫・桧他の巨木が鬱蒼と繁茂している。

参考
人丸:柿本人麻呂  万葉歌人 石見国の役人にもなり讃岐国などへも往復。
玄賓 僧都:阿賀郡水田の生まれ、天台宗の僧につき修行、僧都となる。
空海:弘法大師 我が国の真言宗の開祖、真言密教を国家仏教として定着させた。


 

黒髪山

青龍寺観音堂

アテツマンサク


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